3ー4 Imitation prison

危険へと向かっていく、そして真実へと迫っていく……



今日はいつもの授業の前に朝礼があった。
全員……ようは21匹+アルファが一同に朝から立ち並びさせられるわけだが、だいたいのポケモンが不真面目そうにあくびをしている。

ここの監獄長だと思われるカイリキーが先程から様々な説明をしている。どうやら【後23日】から色んな意味で自由度が増し、そこからが本番となるようでここまでは一通りの事を覚える作業らしい。

「――…それで、模倣囚のポケモンだが、16番が今回最も評価が高かった。3000IPの贈与だ」

これを聞いて周りがざわめつく。もちろんこんなこと聞いてない。

(そうか、模倣囚でいることはどうやら他にも利点があるようだな……)

ついでに、3000IPは確かにここでしか使えないポイントではあるが、ここで買った物は自由に自分の好きなように使える。食事から脱走できるのじゃあないかという道具、さらには『部屋』すら買える。

3000IPは結構まとまった額で、快適なわらのベッドはたやすく、快適な部屋にはもう少しほしいぐらいだ。

「後、最も『攻撃の戒め』を発動させ、被験体として捧げてくれた19番には1500IPを贈与する。」

「え……オレ!?」

もちろん、あんなに暴れたのはアーボックしかいない。

「おー、やったじゃねえかアーボック!」

(モルモットへのアメか……)

いつの間にか16番はIPを受け終えており、アーボックがもらいに前に出る。

IPは印……バッドネスマーカーに特殊な液をつけた羽ペンで文字を書き込む事で追加される。
なぜなのかは分からないがこれを介して様々な事が出来る……ようになるらしい。あくまで実験段階だ。

担当者に1500IP贈与とサインを書き込まれ、アーボックが帰ってきた。

「これで何買えるのかな!?」

「……そういやお前文字読めないんだっけな」

そして、朝礼も終わり……

再び『授業』へ。また新しい内容だそうだが……



特別授業──の前。

「21番!」

番号で呼ばれ慣れてないニューラは振り返るのに数秒かかった。

「……?」

「───面会だ」


面会室に連れていかれ、そこには──……

「──とうとうとっ捕まったか……」

見慣れたエイパム

「ルーク!! ここに来て大丈夫なのか!? あいつら、子供たちはどうなった!!?」

ニューラはガラスに体当たりする勢いで駆け寄った。

「少し落ち着け。面会時間は短いんだからな。5分だと」

「あ……ああ」

「子供たちは、無事だ。私のところで元気にやってる」

「…………良かった……」

ニューラは力が抜けて崩れ落ちるように椅子に座った。

そこで、ルークの出しているサインに気付いた。腕と顔のパーツの動きで文字を表すものだ。

監視員に気づかれないように表面的にも話を続ける。

「スラムは取り壊された。やはり大多数のポケモンは″条件にあてはまらない″と言われ、ヘーベルガーデンを追い出された」

(ここは、隠された場所だ。私が来ていることは殆どのポケモンは知らない。お前がここに居ると数時間前まで分からなかった。大かがりな情報操作が行われているな……)

「そうか……スラムはなくなったのか……」

(ザキと名乗るニャルマーが、この場所を教えた。そして″コネとカネ″で、この面会の機会を作ったのだが……知り合いか?)

ニューラは、『ああ』とジェスチャー

「この件は……お前は悪くない。先輩は私を前から厄介に思っていたからな」

(この件には黒幕がいるだろう。だが私が動くと子供たちまで危険にさらされる……早く『盗まれる』のを待っているからな)

そんな事まで言ったのか、とニューラは心の中で突っ込んだ。

「早くお務めを終えて出てこいよ、バカニューラ」

「───分かった」

ニューラは頷いた。
ジェスチャーの『分かった』も一緒に──……