Small shine
ルークの乗っているバイクは名称こそそれでも、実際の駆動方法やお値段などは全くこっちの世界のとは違うもののようです(何
(そろそろ着くか……)
資料は重いが気持ちは軽く、役所前へと向かう。
「ようニューラ遅いな」
「バカが多くてな……というかなんだその悪趣味の山は」
何だか全身に針が刺さりまくってるポケモンや、何故かバイクの跡がついてるポケモンたちが積んであった。
「正当防衛だ」
「バカだねえ、こいつらも」
「まあ夜の闇に紛れてお目当ての子を狙うつもりだったんだろうけど、おあいにくさままだ仕事一本で行きたいからね」
「だーれが目当ての子だ。♂♀に♂がそっち目当てで寄り付くわけないだろ」
ニューラが顔を重いっきりひかれてるグラエナの首元に爪を沿えて囁く。
「で、どうするつもりだったんだい?」
「ひ、ひぃぃ……」
スコーンと鉛筆がグラエナの頭に当たり、気絶する。
「きかなくてもおおよそ分かる。どうせ私を政治犯にしたて上げて自分達の名前を売ろうとしたんだろ」
「じゃあ今日みたいに月の無い晩は気をつけるにこした事無いね。おお危ない」
ニューラはわざとらしく震える。
月が無いせいで、辺りは真っ暗になってきた。
弁護士は予想以上にハードワークで、その分身体も丈夫。そのうえルークは恐ろしく昔から多対1に強い。子供のころのケンカでもいつもルークが雑魚を引き付け、ニューラが敵の大将を討ち取った。
スラム生まれスラム育ちのストリート戦法。この最強の二匹には、かくとうタイプすら通じない事も多かった。
「―――なるほど、資料はこれか」
暴行未遂の容疑でポケモンたちジバコイル保安官たちにしょっぴかれる中、ニューラはバイクの裏に隠れ、ルークは資料を漁る。
「あーあーあーあ、見事に工事ギルドとやってるねえ、インサイダー取引法違反ではあるね、まず。」
次々とめくって行く。
「凄いだろ、ワタシらのポケモン権無視もかなりある感じだろ?」
「まさに癒着政治だな……よし、事情聴取を受けたら色々と話してみるよ。どうせこの資料、海岸に箱ごと゛捨ててあった゛んだろう?」
「ああ、丁寧に埋めてまで゛捨ててあった゛から、拾ってみたらおや大変」
「……こうしてると、昔みたいだな」
「あの時からやっぱり変わってないな」
「盗みもたいがいにしろよ。いい加減私の仕送りを受けろ」
「お前に依存して生きても仕方ないよ」
「強情め」
「いっつも裏があるやつよりかは良いだろ」
――まだ、この時は知らなかった。
ワタシたちが出会う、恐ろしい闇を。
光に隠れて育つ、全てを引き裂く影を。
絶望を与える、光を。
「──ただいま」
「おかえりなさい」
スラムに戻ったニューラを出迎えたのはヒメグマだけだった。片手にボロボロの拾った本を持っている。
他のポケモンたちはすっかり眠っている──ニューラはねずの番をしていたフェイスを労った。
「フェイスももう眠りな。後はワタシに任せて」
こくん、とフェイスは頷き、本を近くのテーブルに置いて、寝室へ向かった。
チルットのわた羽で作られたベッドはここのみんなで雑魚寝できる特大サイズだ。
ニューラは蝋燭の灯りを吹き消し、唯一外に通じる扉に持たれかかって目を閉じた。
いつものように眠ろうと──したが、今日あったことが頭の中を駆け巡り、一向に眠くならなかった。
(あのザマスメガネ……最後まで分けの分からない行動を……)
もう会うことも無いだろうが。
(明日、ノラたちに話してみるか……みんな冒険談とか好きだから……)
机の上の本も冒険の、伝説の探検隊が世界を救う話だ。
……と。
ニューラは気配に顔を上げた。
「ねぇちゃん?」
「……ノラ」
「つい起きちゃって……おかえり──お休みなさい」
ニューラは立ち上がり、後ろからノラを軽く抱きしめ囁いた。
「──おやすみ」
そっと額にキスをして。