Shadow that steals up

ここでプロフィール公開!

みんなの主人公の……


◇ニューラ(マニューラ)
種族:同上
性別:♀
職など:お尋ねもの
スラム育ちの姉御キャラ。
大事なものはとても大事に、そうでないものは適当にする。
ヘーベルガーデンのスラムでルークたちと育ち、やがて身元のないスラムの子供たちを引き取るような形で共同生活をしていた。

次回はバイク狂の……!




翌日――

【臨時裁判 スラム空き地臨時裁判所】


先ほどからルークとスラム代表アサナン(犯罪歴が無かった)、工事担当者のゴーリキーとあっち側がたてた弁護士のムクホークの攻防が繰り広げられている。
専門用語が多いせいで何を言っているか分からない時もあるが……

(ルークがスラム代表に説明していたのを聞くと……

 ①こちら側の数匹が公平性を得るため様々なグループから、事前意見の無い者(今日知った奴など)を6匹、臨時裁判員二匹、臨時裁判長1匹で今日判決。

 ②今の所ほぼ互角。お互い奥の手は出していない。

 ③『区画整理申し立ての許否について』という議題で進行。

 ④相手側は何か余裕があるようだ。とにかくスラム側を納得させるような内容をうたったりメリットを解説したりしている。

 ⑤思ったよりこっちがてこずっている。出来る事なら奥の手無しで勝ちたい所だが。


(さて、どうすりゃ突破口が開けるか……)



──数時間後。

裁判員が集めらたと聞きニューラは、スラムとヘーベルガーデン‐WASTの境目に張られた簡易仮設裁判所の窓を覗いた。

簡易仮設裁判所は大きなテントだ。
裁判所は中央に有るものの、そちらには訪れ難いスラムのポケモンは多く、遠地で裁判を行う時の移動式裁判所を引っ張ってきた訳だ。

簡易仮設裁判所とはいえ、様々な設備が揃い、中央と差は殆どない。
そして一番違うことと言えば──警備が多少緩い事だ。

入口には警備のポケモンが数匹辺りを警戒してるものの、明かり取りの小窓はがら空きだ。
そこから侵入出来るほど大きな物ではないのだが、中を伺うには十分だ。

(……こいつらか……)

「ニューラ」

聞きなれた声にニューラは振り向いた。ルークだ。

「とりあえず、出来る限りの事はするが……」

「何言ってるんだ。もしもの場合でもあの書類が有れば、大丈夫だろ」

「そうなんだが……少しな」

そしてルークは『裁判を見るなら彼方の窓の方がいいぞ』と向こうを指してから去っていった。


「さて……」

指定された窓を覗くと、調度斜め上から全体を見渡せる位置だった。
死角にもなっているし、ここなら心配なく見れそうだ。

「それでは、続きを行いたいと思います」

裁判長はマンムー。巨体なのかほとんど毛なのか。

「どうだ?ここで勝てそうなのか?」

アサナンが小声でルークに聞いてる。

「やれるだけやりますよマルオウさん。こっちも勝たなきゃマズイですしね」

視線を崩さず答えるルーク。
その視線の先は相手弁護士のムクホークはルークと比べて落ち着いた雰囲気を漂わす。
このような弁護士対弁護士は家庭裁判ならではの光景だ。犯罪ではなくお互いの譲れない部分をかけて争う。

「まずは区画整理決行側がお願いします」

「はい」

……さっきから気になってはいたが、♀のスラムのポケモンの視線がたいていムクホークに注がれている。ルークは手に汗握ってるのだが、他のポケモンは目がハート模様な感じだ。


「―――……以上でこちらの弁護を終わります」

渋い声で弁護を終えると、代表の♀たちが顔を見合わせ頷いている。
なるほど、苦労の理由①は素人の♀がすっかり上手い口車に乗せられている事だ。

「……先輩、手加減0か」

ルークが小声で呟く。
どうもこれが理由②だ。
やり手の先輩なのだろう。

「それでは、区画整理反対側の弁護をお願いします」

「……はい」

「大丈夫なんだろね?ね?」

「まだ今回を含めて2回あります。きっと次が最も危険でしょう。今までは区画整理の利便性をうたってきましたが、こちらがそれを否定してるからなんとか持ち越しています。でも……全く動じないということは、きっとこちらの信用性を消す手や、自ら場所を明け渡すように道徳的面で促したりする手を使うかも知れないです。……そうしたらこっちもこの資料を証拠として提出せざる終えないです。
 ……せめて保安官たちに出した情報の裏が取れれば有効性を帯びるんだが……」

(へえ……昨日のアレを出せない理由は信憑性ねえ……。さて、それじゃあトロい保安官たちは何を手間取ってるんだか?)

ニューラは気づかれないように空き地を抜けだし、保安所へと向かう。



保安所。

その、やはり窓からニューラは中を伺った。

ジバコイルレアコイルが多くいるが故に眺めていて正直いい気持ちはしなかったが。

(あの部屋か──)

凹凸に爪をひっかけ、通りから隠れている壁面を登る。

「───なッ?!」

この件を調べている保安官がいるはずの部屋には誰もいない。

ニューラは部屋の窓の縁に鋭い爪を這わす。はめ殺しの窓の縁がガタンと揺れたのを見計らい、軽く押す──外れた。

ニューラは室内にそっと踏みいる。外れた窓を嵌め込みなおし、接着した。暫くは取れないだろう。

(……変だ。何かがおかしい──何かこの状況が分かるものは……)

机や戸棚を漁るが、何もない。
まさか部屋を変えたのか。

「───!」

この部屋に向かってくるとおぼしき足音──ニューラは慌てて机の下に潜む。

一匹ではない、話し声。

(なっ───!)

ニューラは、目を見開いた──


あらかた資料を漁り、彼らはどこかへ行った。
だが、ニューラの心境は穏やかにはならなかった。
さっきのコイルたちが話していた事が真実ならば、負ける危険性はいっそうに高い。

(捜査中止……資料放棄!?)

ジバコイル保安官が判断ミスをするのはよっぽどの事だ。
普通なら完全に冷徹に機械的にまで調べあげるのは、ニューラが経験済みだ。
捜査を中止するということはすなわち普通これ以上調べる必要性は無いと判断した場合だ。
だが今回の件は明らかに黒。目の前の巨悪を見逃すなど、そうそう無い。

(誰かが裏で……!?)

いてもたってもいられなくなったニューラは急いで裁判所へ戻る。窓は鍵を開けて鍵に布を巻き付ける。その端を持って外側に回った後、窓を閉め布を引く。
その力で鍵はかかり、絶妙な固さに縛ってあった布はほどけ、回収した。

戻った所で何も出来ないのだが……

(悪い胸騒ぎがする……!)