Garden
キャラクタープロフィール
◇ルーク
種族:エイパム
性別:♀
職:弁護士
スラム出身だが実力により弁護士にまで上り詰めた。ニューラとは腐れ縁の親友。裏事情にも精通していて、その手腕を見たニューラは『腹黒』と呼んだ。
改造したバイクでギリギリの速度を出す、スピード&バイク狂。
その話し方や行動から♂と間違われることもしばしば。にぃちゃんとよく呼ばれる。
多人数戦を得意とする。
次は事実人気NO.1なメガネです。
同時刻、スラム。
多くの残っているポケモン達が──結果をそわそわしながら待っていた。
いつもは怒声や泣き声で喧しい場所までもがひっそりと静まりかえっている。
まるで時が止まったかのように──……
そしてニューラの家では。
「ねぇちゃん、どこにいったんだろう……」
「知らないの? ここがこわされないようにがんばってるんだよ」
ピィのサーは指を一本立て、ビシリとノラを指した。
「ルーク姉といっしょに」
「「そう、ルーク兄と」」
コラッタ兄弟がハモる。彼らが言うには『ルークはオトコマエだから姉より兄とよんだ方がしっくりくる』のだそうだ。
「まだなのかな?」
「ちょっと、サー。扉勝手に触ったら……」
ビックス(コラッタ兄)の制止を聞かず、サーは一センチほど扉を開けて隙間から外を覗いた。
こういう行動を普段止めているフェイスはまだ眠ったままだ。
「今なら大丈夫だよ! 普段道に沢山いるポケモンもいないし、ちょっとなら出ても」
「そーだな」
「ウェッジ!」
ポコリッ
弟に兄の拳が決まる。
「う……。でもさ、ビックス。ルインとかフツーに出てるじゃんか。心配しすぎなんだ」
「ルインはるい──」
その時、サーが二匹の話に割り込むようにして突然言った。
「『さいばん』見てみたいひと手をあげて!!」
そんな子供たちの思惑も知らぬまま、ニューラは裁判所へと帰る。
(何とか間に合ったか……。ルークの弁護は聞けなかったな……)
窓から覗くと、再び先輩弁護士の方が語っていた。
「――……さて、私は今まで区画整理の利便性を訴えて来ました。これが最後の弁論ですので、少し趣旨を変えて主張したいと思います」
(来たッ!)
ニューラも思わずツバをのみこむ。
「どうぞ」
「ここに、指名手配犯のリストがあります。実は、ジバコイル保安官たちの調査結果によるとヘーベルガーデンの指名手配犯の約半数はここスラム出身だということが載っています」
コピーが全員に配られる。
「……なるほど、確かにそのようです。証拠品として預かっておきましょう」
「続けます。そして貧困の巣窟化もちろん、年々範囲が拡大しつあり、一般市民が立ち入るとそれだけで多くの犯罪が……――」
ニューラは資料コピーが配られるたびに納得した顔が多くの判決員、特に裁判長に見られるのを見逃さなかった。
(まずいな……こっちの信憑は最悪だ)
「――…そして、区画整理によって街の安全と秩序の向上の他、全体的にとても有益をもたらすのです」
「確かに、興味深いですな。スラムの無い大都市……」
「みんなで幸せになりましょう」
スラムの住民たちに向かって言葉を投げかけた。ムクホークの意中の♀はともかく、道徳的な面で訴える事もしたのは゛ガンコジジイ゛にも響いたようだ。納得した顔をしている。
「さて、それでは……」
「あー、すいません、最後にもうひとつ」
「はい、どうなさいました?」
「実はあることで証明者を呼んでるのですが……」
「その証明者とは、一体何の?」
ムクホークは真っすぐルークを見る。
「私の後輩であり、相手側の弁護士のルーク。彼がとても信用できる相手ではないという事の証明です」
ルークは驚き無言で固まる。
ニューラはよりいっそう胸騒ぎが強まった。
(何を……する気だ)
「それは、彼女が犯罪者、しかも指名手配中のポケモンと秘密裏に関わりあっていて、しかも何やら怪しい取引すら目撃したというヘーベルガーデン市役所勤務パーキングエリア番担当のケッキングさん!彼が撮った証拠連続静写再生機などもあります!」
(あ、アイツ……仕事……してやがった!!)
ルークの事をまともに見れず、窓を背中にして倒れ込んだ。
(おしまいだ……)
立ち上がり、駆け出して裁判所を抜けた。
そのままどこへ向かうでもなく駆け抜け、その後には水滴が残った。
子供たちの思惑で、子供達が裁判所へと向かっているなど知らずに。
どこまで走っただろう──ゆっくりと速度を落とし立ち止まる。
コツン
ニューラは近くの木に額を当てた。目を閉じ、深く息を吐く。
(負けた……確実に……罠に嵌めらた……っ……)
数日もすればスラムのポケモンは追い出される。
(……ワタシはヘーベルガーデンに留まれない──だけど、あいつらを連れて外に出るのは……)
ニューラは木を殴った。
そこから木が凍っていく──
「こうしちゃいられない。あいつらを…………」
思い出したのは、少し前にルークが言った言葉──弁護士としての信用は落ちたとはいえ実績がある──ルークなら大丈夫だ。
ルークに兄弟たちを預け、自分は速やかにヘーベルガーデンから去る──それが今取るべき行動だった。
すぐさま家に向かう。
「ただいま、悪い知らせだ……」
扉を開けたが──ポケモンの気配がない。
すぐに飛び付いてくるノラは?
元気で明るいサーは?
やんちゃ盛りなビックスとウェッジは?
「ノラ? サー? ビック───!」
奥の部屋から小さな気配。
「おかえり……って、あれ。みんなは──?」
まだ眠そうに目を擦りながら、ヒメグマ・フェイスが出てくる。
ニューラは家中を見渡す。
やはり、いない。
心臓の拍動が大きく聞こえた。
「まさか──……」
フェイスと裁判所に駆け付けた時は遅かった。どよめく大人達の中に紛れて大泣きする子供たち。警備員が必死で止めてるが……
……と、こちらをやじ馬の一部が見る。すると、徐々にみんなこっちを見る。氷より冷たい視線だ
「……なんだ」
一匹が突然走ってきて、振りかぶって殴られる。全然知らないがみずぼらしいサボネアは恐らくスラムだろう。
普段なら避けれた。避けれなかった。
後ろへと倒れ込み、尻餅をつく。
それを機に石が飛んできて、そこらへんのぼうきれで叩かれ、囲まれ、その流れにフェイスが押し流される。
「……フェイス……!」
「……うう、ねぇち……――」
体中に痛みが走る。腹を蹴られて倒れ込む。
集中的にリンチを受ける。殴られ蹴られ……
「おい、こいつの仲間もとっちめちまおうぜ!」
誰かが怒号を上げる。
小さな甲高い悲鳴が上がる。
それは何かの警鐘のように、しばらく響き渡った……