Fate

◇ザキ
種族:ニャルマー
性別:♂
職:怪盗?
ザマス眼鏡を特徴とし、彼の癖である″くいっ″は他のポケをよく苛立たせる。
いい正確をしていてサディストの為、彼を追う探検隊や保安官達はよく酷い目に会うことになる。
巷では″怪盗紳士猫″と呼ばれているが、表の顔は大地主にして──……


次はきっと限られた層での趣味を持つあの子です。


◇◇

エピソード3

Fate


ニューラはゆっくりと目を開けた。ぼやけて辺りがよく見えない──

殴られ蹴られ──いつの間にか気を失っていたらしい。

頭の中に悲鳴の残響が残っている。

(…………っ)

ニューラは身体の悲鳴を無視し、身体を起こした。

視界が段々はっきりしてくる。
白い天井、白い壁、白い床──……

「ここは……どこだ」

ニューラが起きたのに気付いた看護婦らしいキレイハナが騒ぐ。

「──起きた!? まだ動けないハズなのに……」

「ワタシ達が居レバ大丈夫デス。起キタトイエ、危害ヲ加エラレル程……」

ジバコイルが落ち着いて答える───ニューラは自分の置かれている場所と状況に気づいた。

いわゆる警察病院だ。

左腕からは手錠が伸び、壁に繋がれている。

「ここから出せッ!」

ニューラは痛む身体を起こし、無駄だとは分かっていながらも鎖を右の爪で切り裂く。
ビクともしない。

「あのっ……まだ動かない方が……」

「看護士サン」

「──はい」

キレイハナが頭の花から粉をニューラに向けて噴出した。

(″ねむりごな″かッ───くそっ……)

ニューラはまた意識を失い──……

次に目を開けた時、見たものは。
警察帽を被った──……

「元気だったかい?」

「───ザキ?!」

ニャルマー、ザキだった。
ザマス眼鏡はつけてない。

「いやあ偶然偶然、一日保安官やっていたら会うだなんて」

「いいからここから出せっ!」

偶然……にしては静かすぎるムショ内。

「それよりも、その印気付いた?」

ニューラの右腕を見て言う。

「……なんだこれは」

気が立っていて気付かなかったが、右腕に三本の先に別れたランスと複雑に絡み合ったツタの白い印が。

ヘーベルガーデンのとこだけに試験導入されたお尋ね者用バッドネスマーカー。死ぬまで付き纏う……予定の……戒めの印」

一体どうやったのかは分からないが、くっきりと毛を無視して浮かび上がる印。どこでも目立つだろう。

「そう怖い顔しないでよ。まだ試験用でどうなるかは分からないんだ。もしかしたらどうにかなるかも知れないし。それに、それは見えやすいだけじゃない」

「……何があるんだ」

「三つの戒め」

三つ……この印の矛先の部分の数と一致している。

「一つは攻撃の戒め。相手を必要以上に攻撃しよう、激昂により我を失うなど、相手を危機に陥らせるようなら右側の先が輝き、激痛による制止と心を安定させるホルモンの分泌を促し落ち着かせ、思い出させる。」

゛思い出させる゛と言うのが気になる。

「二つ目は左端の矛先、悪徳の戒め。盗む、騙し取るなど悪い事をしてこちらが得する事を実行しようものなら平行感覚を遮断して動けなくする。そして思い出させる」

また゛思い出させる゛という単語が出てきた。

「そして中央。罪行の戒め。それでも何かテロだの破壊工作でもしようものなら、その者に終わりをもたらす。そして最期に思い出させる」

最後まで゛思い出させる゛という単語が出てきた。

「……ロクなもんじゃないな」

「ロクにさせるための物らしいからね」

「アンタも捕まったらこうなるんじゃないのか?」

「ワタクシなら軟禁されるだけだけど……」

「…………」

やはり何者なのだろう、このニャルマー。政界に影響を持つほどの大富豪のようではあるのだが。

「──で、一日保安官がワタシに何の用だ。そもそも……本当に『偶然』か?」

意味深にザキは笑う。

「キミを″盗み″に来た」

「───ハァ!?」

ニューラは目をパチクリさせる。何だろう、今、凄い台詞を聞いた気がする。

「でも、ここに″まっとうなルート″で来てるワタクシがやる訳じゃない」

「え?」

「体が回復すれば、キミはやがて北の更生施設に送られ───そこで『教育』を受ける」

教育、という言葉にニューラの毛が逆立った。
何度もそこの悪評は聞いていた。
教育といいながらやっていることは洗脳だ、と。

ザキはどこからか巻いた紙を取り出して広げた。地図──いや、見取図だ。

「これは、そこの見取図。隠し通路も描いてあったり。こう逃げて、この森に入ればワタクシの敷地──簡単でしょ?」

「──どうしてアンタにワタシを逃がす必要がある?」

ニューラが当然の疑問を口にする。

「盗み出して欲しいものがあるんだ──バッドネスマーカーの解除方をね」

「解除方……?」

「『キミタチ』は初の試験体──つまり研究材料だ。だから、その印を作り出したポケモンもあの場所にいる」

一息おいてザキは続ける。

「作り出されたものに壊れないものはない。それにこういうモノは、冤罪だった時の為、解除出来るようなっている──」

「……アンタは何がしたい。目的は何なんだ」

ニューラは低く聞く。

ザキは外した帽子を前足でくるくると回し、宙に投げて頭でキャッチした。

「──無事に逃げられたら教えてあげる」

そして、ザキは意地悪な笑みを浮かべた。